木のグランドフェア

元 北海道立林産試験場長 大久保 勲

 

 

 (社)北海道林産技術普及協会が創立50周年を迎えましたことはまことに喜ばしいことで、改めてお祝いを申し上げます。協会がこれまで北海道の木材産業界の発展に貢献されましたことに敬意を表します。

 50周年を記念してCDを制作するということで寄稿を求められましたので、事業の立ち上げから参画していました「木のグランドフェア」についてその経過を述べたいと思います。

 「木のグランドフェア」は平成4年から開催されています。私が性能部から企画指導部に異動になった年でした。林産技術普及協会と林産試験場は共同で旭川市民や道民に木材を理解していただき、木材に触れてもらうことの出来るように「木製屋外施設展」や「木製窓展」などの行事を夏期間中に実施していましたが、平成4年は日本各地でつくられている木のおもちゃ、遊具を展示する「日本の木のおもちゃ &木の遊具展」が企画されていました。当時の中川場長から、せっかく子供たちに喜んでもらえる行事なのでお年寄りから子供まで家族で楽しんでいただけるようなオープニングイベントを考えるようにという指示が出されました。

 この指示を受けて、期間のはじめの土、日曜日の2日間にオープニングのお祭りとして現在のウッドサマーフェスティバルに当たる催しを開催することにしました。これは木と暮らしの情報館とログハウス「木路歩来」及びその周辺を会場に、来場いただい方々にトドマツ間伐材を使って巣箱やバードテーブルをつくる木工教室、林産技術普及協会会員企業の協力による工場の端材(木っ端)や丸太(ドンコロ)を格安で販売する木っ端市、さらに地元西神楽農協などの協力によるメロンやトウキビ、その他の野菜の販売、また、市内のクラフト企業の製品の販売などお祭りにふさわしい行事を計画しました。

 こういうイベントはお客さんが来てくれないことにはその価値が半減します。旭川市内の幼稚園、保育所、小中学校全てに案内を出しました。また、新聞や放送局などマスコミにも催しの案内をしました。また、市役所の広報誌にも記事を載せていただきました。こうして天候を心配しながら当日を迎えました。

 このときには現在の開会式に当たることはやりませんでした。木工教室の受付を見ながらお客さんの入りを心配していました。第1日目の土曜日は何とか無事に終わり人出もまあまあかなと思いました。ありがたいことに北海道新聞がその日の夕刊でこの行事を取り上げて記事にしてくれました。

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 次の日の日曜日、午前10時開場ですが、我々スタッフは9時前に出勤します。何か様子がおかしい。10時前に駐車場が満杯になりました。その後も人出はとぎれず、駐車場に入れない車が場内の通路の両側にびっしり並びました。このときの来場者数は林産試験場が昭和61年に移転してから最大になりました。朝から終了時間の午後4時まで人出のとぎれることがありませんでした。ジュース類などは自動販売機はもとより、別売りの氷で冷やしたものも3時前には売り切れてしまいました。野菜類も完売、木っ端やドンコロなどもほとんど売り切れの状態で、追加の注文も間に合いませんでした。改めてマスコミ報道の威力に驚きました。平成4年当時、旭川では夏休み期間中に親子で楽しめるイベントはあまりなかったのですが、それにしても、これ以上の人出は以後、経験がありません。

 平成5年は北海道の木工玩具、民芸玩具、木工クラフト、民芸クラフトをメイン展示に、伊藤英二の遊びの世界、第1回子供木工作品コンクール及び子供レリーフコンテストを新たな行事として開催しました。「伊藤英二遊びの世界」はログハウス「木路歩来」を会場に留辺蘂町在住の木のおもちゃ作家伊藤英二さんが製作した作品大小約100点を展示するもので、これらのおもちゃは子供たちが自由に触れ遊ぶことが出来るようになっていました。多数の木球を入れた直径3メートルぐらいの木の砂場やドールハウス、木のオルゴール付き滑り台など子供たちに人気のおもちゃがたくさんありました。この「伊藤英二遊びの世界」は平成7年まで3回実施しました。第2回目だったと思いますが、この展示の後すぐに確かNHKでの展示が控えていて、次の日の朝早く送り出さなければなりませんでした。そこでフェスティバル終了後企画指導部長を始め僅かのスタッフで荷造り、トラックに積み込みを行ったのですが、夕食もとらずに、終了したのが午後9時をすぎていたのも懐かしい思い出になります。

 子供木工作品コンクールは全道の小中学校から木工工作品を出展してもらい木と暮らしの情報館の二階で展示を行い、優秀作品には表彰するものです。作品には個人と団体で応募するものがあります。最近では小中学校で木工に関して熱心な先生が少ないこともあり、募集には苦労しましたが、第1回目のコンクールには23校164点の応募がありました。

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 子供レリーフコンテストは、林産試験場で開発を行い、民間企業で商品化されているアート彫刻版を全道の小中学校に提供し、彫刻刀などで彫り込んだレリーフ作品を出展してもらうものです。第1回目のコンクールでは、アート彫刻板の知名度不足もあってか応募校が少なく、最終的には11校、95点でした。

 平成5年において、ウッドサマーフェスティバルに相当するイベントは期間中の半ばくらいに行いました。平成4年とほぼ同じ内容、同じ規模でしたが、上述の子供木工作品コンクールと子供レリーフコンテストの表彰式を併せて行いました。

 平成6年は世界の木のおもちゃ&クラフト展をメインに、平成5年と同じような行事を企画しました。実のところ、「木のグランドフェア」「ウッドサマーフェスティバル」はこの年から使われるようになりました。同じような行事ということで、平成4年のイベントを第1回目としています。私は平成6年の10月に企画指導部を離れましたので、スタッフとして携わったのは3年間ということになります。

 その後、5回目(平成8年)からは親子でベンチやラックなど作る親子日曜大工教室を行い、作品のコンクールを始めました。この年から子供木工作品コンクールと親子日曜大工作品コンクールの優秀作品に北海道知事賞が授与されるようになりました。また、木材を理解し、生活に生かしてもらう講演会を開催したこともあります。

 林産技術普及協会の竹内前会長は木材を市民にPRすることに非常に熱心でした。アート彫刻版を用いた子供レリ−フコンテストや平成13年からのお年寄りによるレリーフコンテストなどは竹内前会長の提言によるところが大きいものがあります。また、平成12、13年に開催した間伐材利活用展などもそうでした。

 平成13年の第10回の開会式で私は第1回の木のグランドフェアの立ち上げに直接関わった者として、もう10回目になるかと非常に感慨深いものがあると述べたことを思い出しています。このイベントは今や旭川の夏の行事として定着しております。今後とも、時代にあった内容を検討しながら末永く続けていって欲しいものです。