五十周年に寄せて

元 北海道立林産試験場長  竹 野 鐵 男

 創立五十周年を迎えた北海道林産技術普及協会は15号台風の風倒被害を契機とした木材産業の乱立期から輸入外材が支配的となった今日まで、本道の木材加工技術の発展高度化に大きな役割を果たしてきたものと思います。

 この間、道立林産試の研究成果を応用して加工技術の高度化に努められた業界の方々をはじめ普及事業に係わった多くの方々の永年に亘るご努力とご苦労に心から敬意を表したいと思います。私は昭和62年から4年間道立林産試に勤務し、普及事業の面では業界の多くの方にご協力を頂いたことと、現在“木と暮らしの情報館”として人々に親しまれている展示施設の建設が印象に強く残っており、若干触れてみたいと思います。年月も経ち、記憶は断片的、曖昧になっている点はお許し頂きたいと思います。

 建物の形状としてはなかなかユニークでランドマークとなり得るものになったと思います。このデザインが決まるまでには円や四角や三角を書きまくって、場内の担当部署では大変な苦労を重ねました。最終的には地元専門企業の御協力を得ることで、周辺にある大型ログハウスや大断面集成材のタワーをも優越する景観を造り出すことができたと思います。構造については当然として大断面集成材が活用されました。在来の木造工法でこれ程の大規模建造物を組み上げるには柱や梁を多用するのが普通ですが、集成材の中心に厚い鋼板を押し込みドリフトピンで固定するという接合方法を使ったことで、建物内部に柱や梁のない軽快な構造とドームのような広い自由な空間が確保されることになりました。野外の建設現場での構造用集成材の接合に際しては、工場内で集成材と鋼板に正確に穿ったはずのピン穴にずれが生じて、ピンの打込みに苦労したという話もあって、木材と他材料の共用の難しさを改めて感ずる場面もありました。館内の二階部分の造作は、試験場の試作製品としてカラマツ床材と床の防音材としてゴムと木材の混合チップボードを試用し、また、西側外部にはトラス構造のテラスを作るなど、直営作業で新しい木材利用の可能性についても試行されております。

 館内の展示については、関係企業のご協力で展示品も次第に充実、改善されて行き、ログハウスの展示や普及協会が定期的、大規模に行なっているイベントなどとも一体となって木材や木製品に対する一般市民の関心を高めることに大きな役割を果たしていると思います。

 さて、今年は統一地方選挙の年と重なっており、某新聞の記事によると、候補者の告知板は従来ベニヤ板を使っていたが、使用後の廃棄のことを考えて、今後はリサイクルの容易なプラスチック板に変更するというのです。本当の理由は判りませんが、これからの社会はリサイクルが重要となることは確かなことで、木材も廃棄物とならないような用途と使用方法が大切になって行くでしょう。現在木材用途の大宗は住宅建材用だと思いますが、最近は国土交通省も住宅面積を大きくする必要があるとしており、建材もコンクリートや鋼材などの物も増加して、総じて高度化・耐久化が進んで、木材の使用方法も変化しつつあります。

 木造住宅でもヨーロッパのハーフティンバーの家のように数百年も永持している例もあり、廃棄材を少なくする方途も種々あるのではないかと考えられます。

 林産技術普及の分野でも、これまでの新技術の普及ということに加えて、建築技術と林産技術のニーズや情報の相互交流が一層重要になるような気がします。林産技術普及協会が五十周年を契機に新たな役割と飛躍を目指して、益々発展するよう祈念しております。