『木と暮らしの情報館活用促進事業』と北海道林産技術普及協会

北海道立林産試験場 企画指導部長 鵜飼義和

[はじめに]
 林産試験場では、昭和63年度に国の補助事業である「モデル木造施設事業」を活用して、試験場で開発した製品の展示館となる『木と暮らしの情報館』(写真1)を建設し、平成元年6月に開館式典を行いました。下に同館の平面図と断面図を示しますが、道産カラマツの大断面集成材とドリフトピン接合技術を用いたユニークな構造・デザインを持つ、一部2階建の木造平屋づくりの建物で、延べ面積544.62 m2の広さを有しています(1階:398.44 m2、2階:146.18 m2)。

図 木と暮らしの情報館の平面図と断面図


 建物の内外には林産試験場の研究成果が生かされています。内部には交差重ね合わせ接合を用いた階段用集成材・ささら桁、床衝撃音防音マットとカラマツフローリングやカラマツ構造用合板、外部には、防腐処理木材を用いた回廊、外部木デッキ・木レンガアプローチといったエクステリア(写真2)を備え、建物全体が展示品になっています。

[木と暮らしの情報館の利活用]
木と暮らしの情報館では、多数の来館者に対して、林産試験場の開発製品・新技術、北海道で生産されている木製品の展示やその情報を提供することで、木のぬくもりと暮らしの中に木製品を取り入れることのすばらしさをPRしています。また、1階の一部スペースを「多目的ホール」として確保するととともに、ビデオなどの視聴覚設備を備えており、業界関係者や一般道民などの研修・講習会、および児童・生徒の課外授業(総合的な学習)に活用することも可能となっています。

 さらに、林産試験場と(社)北海道林産技術普及協会は、一般道民を対象にした木材利用の普及啓発イベント『木のグランドフェア』を毎年7月下旬〜8月下旬にかけて開催していますが、この多目的ホールや2階の展示コーナーを特別展示スペースとして活用し、木製パズルや木の遊具の展示、小中学生や高齢者サークルの木工作品コンクール、アート彫刻板作品コンクールを開催しています(写真3)。平成12年と13年の同フェアでは、回廊や外部木デッキなどを活用して、間伐材で製作・販売されているエクステリア・ガーデニング製品類を展示PRする「間伐材利活用展」を行い、道民の方々に間伐や間伐材利用の大切さを普及しました(写真4)。

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[新たな活用促進を考える]
 林産試験場では、平成11年度から『木と暮らしの情報館活用促進事業』により、木材および木製品のさらなる普及を図ることを目的に、木と暮らしの情報館に展示する木製品の展示基本方針を定めました。
 展示する木製品については、企業などから応募を募って原則1年間の展示(必要に応じて継続も認める)を行い、製品展示に際してはPR効果の高いレイアウトに配慮することとしました。木と暮らしの情報館に展示する製品は、以下の条件を備えたものとしています。

 (1)北海道内に生産施設を有する企業などが製造したものであること。
 (2)(1)の企業などが北海道内で製造したものであること。
 (3)木材または木質材料で製作されたもので、その種類は、
    @建築材料(内装材、建具、造作材、その他)、Aエクステリア、Bクラフトとする。

 さらに、民間活力の活用のために本事業を企業・団体に業務委託することも決定しています。本業務の遂行に当たる企業・団体は、木材や木質材料の特性を熟知していること、道内の木製品製造に係わる企業などおよびその開発状況を詳しく把握していること、展示企画能力を有することが求められることになり、林産試験場として、この全ての条件を満たす企業・団体を精査した結果、以後4年間にわたって展示製品の維持管理および来館者への説明、展示製品の募集、展示企画および設置の3業務を(社)北海道林産技術 普及協会に委託しています。

 この取り組みにより、木と暮らしの情報館における展示製品のリニューアルの促進、夏期間(5〜9月)における土・日・祝日の開館などが実現し、一般道民に対する木材、木製品に係わる情報提供などのサービスが飛躍的に向上したと考えています。

[写真で見る木製品の展示状況]
平成15年3月現在の展示状況を紹介しますと、建築材料として内外装材が9社24点(写真5)建具が3社9点(写真6:窓6点、ドア3点)エクステリアとして1社7点(写真7)クラフトとして23社728点(写真8)となります。いずれの展示製品にも製造者、製品名、使用材料、および製品の説明などを表示するとともに、2階にパンプレット専用コーナーを設けるなど(写真9)、来館者の皆さんへの情報提供を心がけています。

 また、2階スペースの一部には、林産試験場の開発製品・新技術の紹介に加えて、一般的な木材利用技術や木材の特性などを紹介するパネル、試作品、教材を配置していますが(写真10)、今後においては、環境にやさしい循環資源としての森林の役割や林業・木材産業との関わり、また地域で産出される木材を各種材料やバイオマス資源として有効に利用することの大切さなどを道民に向けて情報発信する『木と暮らしの情報館』を目指したいと考えています。