創立50周年によせて

北海道木材協会  会長 三津橋 貞夫

 今日の林産試験場の前身である林業指導所は昭和25年に開設されましたが、その3年後に北海道林産技術普及協会が発足したことになります。

試験場の試験・研究テーマの選定や成果の普及指導については、試験場が主体的に取り組むべきものではあります。しかし、業界と共に歩む試験研究機関として運営していくためには、業界が当面抱えている技術的問題や中長期的視点に立った試験研究課題を的確に把握し、これを試験場の業務に反映できる仕組みが必要であります。公的機関である試験場と企業を結びつける林産技術普及協会の存在は、産業に直接役立つ試験研究を標榜している林産試験場にとって、不可欠な組織であったと思います。

 普及協会は、発足とともに刊行された「木材の研究と普及」をはじめ、技術図書などの出版事業、さらに、講習会や講演会の開催、技術相談や試験依頼の仲介、また、人々の木材への理解を深めるためのイベントの開催など多方面にわたる対外的活動を展開する一方、試験場の運営や研究活動の円滑化のための支援業務を実施してこられました。これら試験場と普及協会の活動によって、本道の木材関連産業は、技術の向上や経営の改善などの面で多大の恩恵をこうむってきました。これまでの関係者のご努力に敬意を表し、感謝申し上げる次第であります。

 いま、国内の木材業界は、住宅の需要が頭打ち状態にある上に、市場の国際化による安価な製品の流入などにより、誠に厳しい局面に立たされています。輸入を促す主因となっている内外価格差は、現時点では、工程の合理化や付加価値の向上などでは到底埋め切れないほど大きいのでありますが、長期的には、途上国の木材需要の急増などにより世界の木材需給はタイトになり、趨勢として輸入製品の価格を押し上げ、内外価格差は縮まるものと考えられます。さらに、木材は地球上で数少ない再生産可能な資源で、加工時の環境への負荷が少なく、循環利用が容易であるなど循環型社会を形成するうえで掛替えのない資源であります。このような認識のもとに、業界として、不断にコスト削減や付加価値の向上、新製品の開発に努めるならば、必ずや今日の困難は克服され、近い将来、活力を持った産業として発展できるものと確信しております。

それにしても木材業界として林産試験場に対して忸怩たる思いがあります。林産試験場は、創設されて50余年を数え、世界にも誇るべき体制で、数々の実績を積み重ねてきましたが、本道の業界は、この林産試験場を、そして、その成果を十分に活用してきたといえるだろうか。豊富で優れた品質の木材資源に安住して、自らの経営改善や技術革新に目を背けてきた面もあるのでないでしょうか。内外の資源の現状や将来を考えるとき、業界としては、林産試験場を経営や技術革新のパートナー、先導役として再認識し、切磋琢磨しつつ共に歩むという、当然な関係を築くべきであります。林産試験場としても、産業に直接役立つ機関という初志を貫き、木材の将来を見据えた試験研究や技術の蓄積に一層専念すべきであろうと思います。

林産技術普及協会においても、試験場と業界をつなぐ組織として、試験場の成果の普及などの業務はもとよりですが、将来、業界が必要とするとみられる試験研究課題を積極的に探り、また、試験研究の環境づくりを支援するなど、この50周年を契機に今まで以上に幅広に活動を展開し、さらに飛躍されることを期待し、祝辞といたします。