北海道林産技術普及協会の創立50周年を祝して

北海道立林産試験場長 齋藤 勝次

 50年という半世紀にわたる社団法人北海道林産技術普及協会の、数々の活動と多くの成果に対しまして敬意を表しますとともに、この大きな節目となる創立50周年を迎えられましたことを会員の皆様とともに心からお慶び申し上げます。

 歴史を紐解いてみますと、戦後、石炭や鉄鋼の傾斜生産方式などが本格化する経済復興のなか、木材は国内生産可能な数少ない基礎資材として位置付けされました。木材統制下の混乱のなか、本道でも木材産業の活動が活発化し始めた昭和25年に網走、十勝地方に並ぶ木材主産地であった旭川に北海道における木材産業の試験研究拠点として、道立林産試験場の前身となる林業指導所が開設されました。そして間もない昭和28年8月に木材産業界の有志の方々が発起人となって、林業指導所の試験研究成果や新技術を取り入れ、生産技術を向上させようと、北海道林産技術普及協会を創立する運びとなったと承知しております。以来、北海道林産技術普及協会が、常に北海道における木材産業の技術の発展に向けてご尽力され、当試験場とともに歩みを進める良きパートナーでありますことを感謝いたします。

 また、50年という時代の流れは、本道の森林や林業、木材産業の状況を大きく変えました。林業生産、木材生産活動として、本道の素材生産量を見てみますと、昭和20年度には240万m3であったものが30年度に600万m3、40年度では900万m3、そして昭和47度年の1,100万m3をピークとして、その後ゆるやかな減少を続け、平成14年度には300万m3と見込まれています。

 このような生産量の推移やこの間の社会経済発展のなかで、道内の森林状況や林業事業体などの形態の変化のほかに、道産材から外材への依存の高まり、天然林材から人工林材への移行、木材産業の経営視点のグローバル化や木材の高度加工技術の進展、あるいは非木質資材との競合などに取り組みながら、本道木材産業が発展し変遷を遂げてきたことを伺い知ることができるところであります。貴協会におかれましてはこうした歴史を見つめながら、高橋秀樹会長はじめ歴代会長を中心に木材産業に係わりの深い会員の皆様が、新技術の解説や普及のための機関誌を発行し、また、技術者養成の講習会や講演会など多年にわたり重ねるとともに、次世代を担う学童を含めた多くの道民を対象に、木材の利用を促すイベントやコンクールなどを継続して開催するほか、木材PRのための展示施設の運営管理など、それぞれの時代のなかで大きな役割を果たされ、ここに創立50周年を迎えられましたことを改めてお祝い申しあげます。

 近年、国際的に森林が地球環境の保全や人々の安全な生活に大切なものであることが強く認識されて来ましたが、CO2排出の増加による地球温暖化の対策として森林整備の効能の位置付けを明確にする国際的な作業への取り組みも、国の重要な政策として進められています。

▲TOP

 こうして、50年を区切りとして森林や木材産業の流れを見ましても、私たちの生命が森林とともに在り、そして私たちが日々の生活と文化の空間を創造するうえで、木材は欠くことのできない資源であることの法則性は、これからも変わらないものと思います。森林と木材利用の「循環利用型社会」を構築し支えていく上で、木材の利用技術、生産加工技術を産業活動の主柱に据えた本道の木材産業が、今後とも消費者から求められる性能と品質の高い製品を供給していくなど、重要な役割を担って行くものと考えております。

 今年度から道においては、「北海道森林づくり条例」に基づく森林づくり基本計画を推進しています。この計画では、公益的機能の高い森林整備をするため生産される木材の利用の拡大や新たな需要の開拓を目指して、新技術・新製品の開発や未利用資源の新たな用途開拓のほか、木の良さの普及啓発などに取り組むことを計画しています。これらは、貴協会が、これまでも取り組んでこられた主要な業務ですが、今後一層重要な目標となるものと思われます。さらに、この計画は本道の主要な人工林材資源であるカラマツ材について建築材としての使用を10年後には現在の3倍程度までに、建築用人工乾燥製材の生産比率も60%まで拡大するとともに、森林バイオマスエネルギー としての利用量も現在の2倍を目指す内容となっています。

 こうした木材産業の展開方向や発展を実現するには、高度な技術と加工体制の整備が求められますが、貴協会の木材関連産業のほか建築、機械工業など各種産業分野の会員の方々の、技術的な連携や共同研究への取り組みが大いに期待されるところであります。

当試験場におきましても、このような時代に対応して、試験研究や普及指導業務の目標となる「中長期ビジョン」を昨年度改訂し、研究評価方式を取り入れながら今年度から、その実現に向けての取り組みを進めております。こうした試験研究から生まれる新技術や新製品が、より確実に貴協会の活動などによって企業化・商品化され、生活の質や豊かさを求める人々に実用され、受け入れられることが、私ども林産試験場にとっての使命だと考えております。

 今後とも、社団法人北海道林産技術普及協会におかれましては、当試験場の成果を関係の方々へ伝播していただく役割とともに、本道木材産業の技術の発展を通じ、より多くの人々が木の文化をいつくしみ暮らせる社会のためご活躍され、創立50周年を契機として、一層の発展を遂げられますことをご祈念申しあげましてお祝いの挨拶といたします。