これからの木材産業

北海道水産林務部林務局長 梶本 孝博

 

北海道林産技術普及協会が創立50周年を迎えられましたことを心からお喜び申し上げます。北海道の森林・林業・木材産業を担当するものとして、一言お祝いを述べさせていただきます。

 私が大学を卒業した今から30年前の昭和45年当時と平成12年の森林を取り巻く状況を比べてみますと、造林面積は約7万haから6千ha10分の1以下に、森林の伐採量は約1,200万m3から350万m33分の1以下に、製材工場数は約1,000工場から400工場と5分の2に大幅に減少するなど、大変厳しい状況となっています。

 なぜ、こんなにも激変したのでしょうか。最大の原因は、国有林・道有林が木材生産主体の経営を続けたため、木材生産に適した資源が激減したこと、そして関税の自由化により海外から木材・木製品が低価格で大量に入ってくるようになったことによるものと考えられます。

 このように大変厳しい状況にある森林・林業・木材産業ですが、一方では、今、正に歴史的な転機を迎えています。私たちが政策を推進する上でのより所であった「林業基本法」が平成136月におよそ40年ぶりに改正され、林政の基本的な考え方を「木材生産重視から公益的機能重視へ」と大きく転換した「森林・林業基本法」が制定されました。

 また、道では、北海道の百年先を見据えた森林づくりを推進する「北海道森林づくり条例」を平成143月に全国に先駆けて制定し、本年3月条例に基づく基本計画を策定したところです。この中で、木材産業は山作りを支える大変重要な産業と位置付け振興することとしています。

 また、これからの時代は、地球の生態系により負担の少ない産業、具体的には再生可能なエネルギー業界、リサイクル業界、高いエネルギー効率の交通業界などが成長産業となり、このような経済へのシフトは史上最大の投資機会であるといわれています。言い換えれば、来るべき時代は、「環境問題」が「経済」を変えるとまで言われています。

 例えばスウェーデンでは、化石燃料に課税する炭素税を導入しており、この税金により木質燃料が他の化石燃料に比べてもっとも安価となり、その結果木質バイオマスエネルギーを活用した発電が行われています。

 こうした、環境をベースとした考えは現在世界レベルで広がっており、今後は環境をキーワードとした産業の展開が必要となってくるものと思われ、林業・木材産業は環境産業としての役割を担うことが求められています。

 さらには、近年大きく取り上げられるようになった循環型社会の構築へ向けて、道産材利用の拡大は至上命題となります。林産技術は欠くべからざる国民生活の基礎資材の供給を担うのみならず、こうした社会的課題への取組み、成分利用等新しい技術への挑戦、夢のある、希望のもてる将来へ向けて資源をどう育て利用するかといった大変重要な使命を持っています。

 北海道林産技術普及協会には、道立林産試験場などの研究機関と木材産業界、さらには関連分野も含めたより広い産業界との橋渡し役としての期待が膨らんでおり、新しい時代へ向けて、技術の普及を図る中心的な役割を果たし、北海道の森林資源の今後の充実とともに、それを支える林産技術を築き上げることができれば、林業・木材産業の将来に大きな光明をともすことができるでしょう。

 最後に、森林・林業・木材産業が今迎えている歴史的な転機は、森林づくりや木材の高度利用にとって正に追い風であり、この機会を逃さず、私達行政は道民の参加と協力のもと、新しい時代の産業作りを進めてまいりますので、北海道林産技術普及協会におかれましても、林産技術の普及・PRを通じた北海道の木材産業の振興に変わらぬご協力をお願いするとともに、会員の皆様方のご健勝とご発展を心から祈念申し上げ、私からのお祝いと致します。